もちろん普段から1200mmを使いまくるなんてことは考えにくい。が、そこまで使えるということは、レンズの短さで何かをあきらめることだけは無くなるという「余裕」ではある。
これは東京ミッドタウンの庭にいたスズメを、500mm少々で撮ったものだが、かなり離れているのでスズメが驚くこともなく、自然な表情を撮ることが出来た。ビルの陰で薄暗かったのでわずかにブレているけれど。実売45,000円ほどのカメラでこんな写真が撮れれば文句はない。その上60pのフルハイビジョン動画まで撮れるのだ。ファインダーに水準器を表示出来るので水平な写真が撮れるし、機能で不満な点はない。
これが1眼レフカメラの500mmレンズとなると長くて大きいので、カバンから取り出しているだけでスズメが驚くかもしれないし、そもそも一眼レフカメラに丁度500mmを付けていることも少ないので、標準レンズから付け替えている間に被写体はいなくなっていただろう。そこがコンパクト高倍率デジカメの価値で、画質は高級一眼に譲るが、「面白い物を逃がさない」という魅力は大変に高いと思っている。
画質を譲ると言っても、Carl Zeiss Vario Sonner T* 名義のレンズは、SONYの新しい強力な手振れ補正の力もあって、少なくとも5、600mmぐらいまではHX300の裏面照射型2040万画素CMOSセンサーに高精細な画像が記録出来る。1200mmともなると、さすがに原寸大を大きく印刷して鑑賞という感じではないが、それをパソコン鑑賞用に縮小してしまえば充分に使える写真になると今回思った。私はA全版で写真展に出品するなんてことは有り得ないので、あくまでパソコンでよく見えれば良いのだ。あまりにも遠くが見えるので、ちょっとスパイ気分になってしまうのだが。。
東京ミッドタウン横の公園から。中央に小さく東京タワーの展望台が見えている。ここに1200mmでズームしたのが次の写真。
現場で「えーっ」と思うと同時に、なんか笑えてきた。ホントに写るんだなあ、みたいな感想。しかも立ったままズボラな手持ちで。こうなるともう、湿度とか大気汚染の条件の方が大事になってきそう。手振れ補正もかなり強力なようだ。
実は1200mmまで行くと、手のほんの少しの揺れで被写体が画面からいなくなってしまう、それぐらいの揺れなのだ。被写体が真ん中に来て安定して「今だソレ」とシャッターを押すという、そんな感じなのに写ってしまったので「えーっ」と。ま、簡単なので良いので三脚なり肩当てなりあった方が撮影しやすいだろう。何かに置いてセルフタイマーでシャッターを切れば揺れの要素がなくなる。
さて次は中央のクレーンにズームインすることに。(この写真はワイド端)
どーん。効果音としては どーんが合いそう。上の写真の距離から、ワイヤー4本がくっきり写るだけでも驚いた。
さてこのカメラには光学50倍の先に、粗が目立たないように拡大する「全画素超解像ズーム」という機能があって100倍まで記録出来る。50倍以上はレンズはジッとしているわけだから、デジタルズームの発展版という感じか。デジタルズームほど急にぼやけたり斜めの線がガタガタしたりしないから、それをこの程度に縮小してしまうと「これでもちゃんと撮れている」ように見えて使えてしまう。元サイズで見ると、50倍の時より少しベッタリした感じになっているのだが。
100倍の写真の原寸画像を切り取ってみると、「40M 10T IHI」の文字。
こちらは六本木ヒルズ展望台から東京タワー方向。左奥に小さく東京スカイツリーが見えているが、そこにズームインすると・・
特別展望台はアップになると東京タワーかどうかも判らないほど一部分しか写らない。背景になっている高層マンションは2.6kmほど先の勝どきにあるのだが、レンズによって引き寄せられている。撮影地から東京タワーまでは1.5kmほど。
超解像ズームの原寸大になると、展望台の人の服装が判る。最初のワイドで見た東京タワーの写真から、その展望台にいる人が見えるという想像は付きにくいが。
夕陽・・沈む直前で、手前に雲があって暗くなっていたため綺麗に写ったようだ。単にズームしてオートで。映画の「終」という字が出てきそう。
素通しの光が目に来る一眼レフと違ってファインダーも液晶ディスプレイだから、望遠でもふいに失明するような光が飛び込んでくる心配はないが、明るいうちの太陽の撮影には特殊なフィルターなど使わないと受光素子にトラブルが発生するかも知れないので、その辺はよく勉強して自己責任でお願いします。
そういえばこのカメラの良い点がもう1つ。55mm径のレンズフィルターがアダプター無しで使える。普段はプロテクター、たまにはPLフィルターなど、ちょっと凝った写真も撮れる。
フィルター用にアダプターの必要なカメラはレンズ部分が長くなって仕舞いにくくなったりして、使わなくなってしまったことがあった。
次回は今回のような実験写真ではなく、マトモな写真をお届けしたいなと・・